HbA1cと血糖値を同日に測定することで、1回の検査で糖尿病の診断が可能

その成因によって糖尿病は、膵β細胞の破壊を特徴とする1型、インスリン分泌低下とインスリン感受性低下が発病にかかわる2型、その他の特定の機序・疾患によるもの、妊娠糖尿病の4つに分類されます。

代謝・内分泌内科の医師

病態では、インスリン作用不足によって起こる高血糖の程度や病態に応じて、正常領域、境界領域、糖尿病領域に分けることができます。糖尿量領域については、インスリン治療が必要、インスリン注射による高血糖是正が必要、ケトーシス予防や生命維持にインスリン投与が必要、の3段階に区分されています。

日本糖尿病学会は2010年に糖尿病の診断基準の改訂を実施しました。HbA1cと血糖値を同日に測定することで、1回の検査で糖尿病の診断を可能にし、治療を速やかに開始できるようにしたのが大きな特徴です。

血糖値が、空腹時126mg/dl以上、または75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間血糖値が200mg/dl以上、随時血糖値が200mg/dl以上のいずれかを示すか、HbA1c(NGSP値:国際基準値)が6.5%(JDS値6.1%)以上であるかの1項目が合致した場合を「糖尿病型」としました。ただし、HbA1cだけが糖尿病型を示した場合には、必ず再検査を行い、血糖値が糖尿病型を示すかどうかの確認が必要となります。

OGTTは75gのグルコースを経口負荷し、その後の糖の処理状況を調べる検査であり、軽度の糖代謝異常にも鋭敏に反応するため、随時血糖値や空腹時血糖値の測定により判定が確定しないときに、医師に有力な情報を与えてくれます。

OGTT実施時には、負荷前、1時間後、2時間後に尿糖の有無を調べる必要があります。血糖値は瞬間的な値ですが、尿糖は単位時間に血糖値が180mg/dl以上になったことを示唆します。つまり、尿糖を調べることで連続的な動きとしての血糖応答曲線をイメージすることができるのです。

人間ドックや健診の充実により日本ほど早期に糖尿病が発見される国はほかにありません。しかし、早期の治療が放置されたまま、中途失明、透析導入、壊疽による下肢の切断を余儀なくされる患者さんは増え続けています。

糖尿病と診断された早期の段階から積極的に生活習慣を改善してもらう、必要と判断されたなら薬物療法も開始し、2型糖尿病発症前の段階に戻ってもらうようにすることが必須となります。糖尿病を発症しても、糖尿病性腎症や網膜症などの細血管障害や動脈硬化症を発症・進展させないことが、糖尿病治療の目標であることは改めて述べるまでもありません。

日本では健康保険診療下で、患者さんの血糖日内変動がわかる多くの指標、血糖値だけでなくHbA1cやグリコアルブミンなどが広く使用されています。また、作用機序の異なる薬剤を使用することができます。したがって、2型糖尿病は勿論1型糖尿病においても良好な血糖コントロールを維持することは、不可能ではないのです。