狭心症や心筋梗塞の多くは動脈硬化を基盤として発症します

全身に血液を送るポンプの役割を果たしている心臓ですが、心臓自身も冠動脈と呼ばれる血管に養われています。冠動脈は大動脈の起始部から左右に2本出ており、左冠動脈はさらに前下行枝と回旋枝に分かれています。右冠動脈、前下行枝、回旋枝の3本を主要冠動脈といいます。

胸部の締め付けられるような痛み

冠動脈に動脈硬化病変が起こると内腔は狭くなります。これが狭窄といわれる状態で、進行すると、安静時には血流量が保たれていても運動で心筋の酸素消費量が増加すると、血流量が不足して、心筋の虚血が起こります。

この時、前胸部に締め付けられるような痛みが生じますが、これが「狭心症」です。多くの心筋虚血は一過性ですので、安静を保つと回復します。典型的な狭心症は、運動やストレス、寒冷などによって誘発され、多くは数分で消失します。

上記のような生理的収縮ではなく、冠動脈に強い攣縮がおこり狭心症が生じることがあります(冠攣縮性狭心症)。また、心筋梗塞の前段階として冠動脈プラークが不安定となり、血栓ができて内腔を狭小化している場合も狭心症が生じます。

「急性心筋梗塞」は、冠動脈の急性閉塞によって心筋が壊死する病気で、その機序は全て解明されるにはいたっていませんが、コレステロールに富む粥状動脈硬化プラークが破綻し、血栓が冠動脈を閉塞することが大きな要因だと考えられています。

狭心症発作が過去3〜4週間以内に初めて出現した新しい狭心症や、徐々に頻度や持続時間、強さが増すようなものは不安定狭心症と呼ばれ、急性心筋梗塞に移行するリスクが高いとされています。不安定狭心症と心筋梗塞を会わせた病態を急性冠症候群と呼ぶこともあります。

心筋梗塞は死亡率の高い疾患です。発症時には心房細動と呼ばれる危険な不整脈が生じ、病院に搬送されるまでに半数以上の患者が命を落とすといわれています。また、3分の2は梗塞発症前に狭心症がありますが、残りは前触れもなく発症します。

入院後まで生存しても、院内でポンプ失調や心不全を起こしたり、心筋壊死が後半であると慢性的な心不全が起こり、退院後の生活が大きく制限されることになります。また狭心症が残り、再梗塞を起こすリスクもあります。