健診・人間ドックで肝機能検査に組み入れられている一般的な検査項目

一般的に血液生化学検査としてAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP(アルカリフォスファターゼ)、γ-GTP、LDH、総ビリルビンなどが行われますが、国内におけるウイルス性肝炎の陽性率が1〜2%程度あるため、B型肝炎、C型肝炎関連の血液検査と、肝がんの腫瘍マーカーも採用している健診・人間ドックもあります。

肝臓は病変の症状が現れにくい

これらの血液検査で肝機能に異常が疑われた場合には、その原因を究明するうえで腹部超音波検査は非常に有用であり、肝機能の判定はその結果を参考にすることも多くなっています。

総合判定は、ここの検査の異常値のみを見て指示をだすだけではなく、血清脂質、血糖値、飲酒歴、治療薬歴など、肝障害を伴う可能性のある項目も参照にして、総合的に肝機能異常を評価する必要があります。

ASTとALTだけが高値を示す場合、あるいは他の血液検査データの異常として比較してこれらの検査数値異常の程度が明らかな場合には、原因のいかんに関係なく肝細胞の変性・壊死が主体である肝病変を疑います。

正常値の2倍以内の異常を「軽度」、2倍から5倍の異常を「中等度」と見なし、それぞれの場合の対応を推奨します。軽度の異常は経過観察として後日の再検査をすすめ、中等度の異常は原因検索を含めた検査を直ぐに行います。異常の原因としては、ウイルス性肝炎、脂肪肝、薬剤性肝炎などがあります。

LDHも肝細胞障害で異常値を示しますが、他臓器の疾患でも高値を示すため特異性は高くありません。AST・ALTと比較してLDHが著しく高値であるときは血液疾患、悪性腫瘍、心疾患なども疑って検査を行う必要があります。

HBs抗原が陽性の場合、HBVに感染しており、AST・ALTの異常を伴っていれば炎症活動性を伴うB型肝炎と診断し、AST・ALTの数値が正常であれば無症候性キャリアと診断されます。

肝炎の患者さんでは、健診受診時のAST・ALTが正常であっても、過去に激しい炎症を繰り返されていた場合には慢性肝炎から肝硬変に移行していることもあるため、要注意です。その場合、アルブミン、コリンエステラーゼが低下し、総ビリルビンが上昇します。

HCV抗体が陽性の場合、HCV感染状態である可能性が高いですが、インターフェロン治療などの高ウイルス療法によってウイルスが排除された後も、長期にわたって陽性を示します。

脂肪肝ではAST・ALTの軽度から中等度の異常、コリンエステラーゼが高値を示すことが多くなっています。高度の脂肪肝では総ビリルビンの数値も上昇します。脂肪肝の師団には腹部超音波検査が優れており、肝実質エコーレベルの増強が特徴的です。

脂肪肝は原因に応じてそのほかの検査所見に以上が認められます。具体的には、飲酒が原因の場合、γ-GTPの高値に加えて中性脂肪も高値であり、糖尿病に合併する場合には空腹時血糖値とグリコヘモグロビンA1cが異常値を示します。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、血液性化学所見と画像診断からは診断ができず、確定には肝生検が必要です。したがって、健診・人間ドックで脂肪肝の所見が認められ場合には、飲酒歴を参考にアルコール性肝疾患を除外したあと、脂肪肝とNASHの双方を考えて精査をすることが求められます。