喫煙指数が600以上の重喫煙者は肺門型肺がんの高リスク群に分類

国内におけるがん死亡者数は34万人を突破しており、なかでも肺がんは男女ともにがん死亡率で1位となっています。分子標的薬の登場などによる治療技術の進歩が見られるものの、進行肺がんの治療性軌跡は、5年生存率で20%前後を推移しており、依然として予後不良となっているのです。

肺炎様陰影を見たらがんを疑う

肺がんは60〜70歳代の高齢者が多く罹患していますが、非喫煙者に比べて喫煙者は数倍の肺がんリスクがあることから、喫煙は予防可能なリスク因子として、大変重要です。

いわゆる「喫煙指数」(本数/日×年数)が600以上の人は重喫煙者であり、太い気管支に発生する「肺門型肺がん」の高リスク群に分類されます。重喫煙者は仮に禁煙に成功しても約10年は肺がんの発生リスクが非喫煙者に比べて高いままにあるとされています。

三次気管支分岐までの太い気道上皮に発生する「肺門型肺がん」は、管腔内表面に広がるので、早期であるほど胸部写真上には腫瘍自体の陰影が認められません。盛り上がった腫瘍で気管支が狭窄を起こし、その末梢に二次性の閉塞性肺炎像を起こして初めて健診の胸部X線写真で異常に気付きます。

したがって健診や人間ドックの受診者で、喫煙歴が長く50歳以上の繰り返す肺炎様陰影が見られた場合は、中枢の太い気道に狭窄や閉塞を起こすような病変(肺門型肺がん)の可能性を考えて、喀痰検査と気管支鏡検査を行う必要があります。

閉塞性肺炎が進行し、上葉など葉全体の無気肺陰影となった場合、胸部X線写真では左右各葉に特徴的な形状の陰影となります。縦隔リンパ節腫大などは、胸部CTで読影しやすくなります。肺血管造影の走行から左右胸郭内に広がる各肺葉の正常・異常を読み取ります。

末梢肺野の細気管支肺胞領域に発生する「肺野型肺がん」の主なリスク因子は不明であるため、高リスク群を設定することはできません。非喫煙の女性にも多いことから喫煙以外のリスク因子があると考えられています。

肺野型の早期肺がんはX線画像で小型の異常陰影を発見することが最も重要です。がんは個人の病気として同一固体の経時的な胸部写真の比較読影が非常に重要となります。同一人の経時的な画像の比較読影体制を確立すれば、精査に回る症例数も減らすことができるため検査効率が上昇します。

頑固な咳、血痰、胸痛、背部痛などの症例、50歳以上の男女で、呼吸器症状があれば、1度は低線量の胸部CT検査を行いたいところです。胸水貯留例では、胸水試験穿刺を行い、胸水細胞診と腫瘍マーカーの測定が有力な診断となります。