患者数が年々増加する糖尿病性腎症は透析療法導入の原因疾患の1位です

特定健診が焦点をあてているメタボリックシンドロームに関連した腎障害には、糖尿病性腎症、高血圧による腎硬化症、高尿酸血症による腎障害などが挙げられます。

慢性腎臓病(CKD)

なかでも糖尿病性腎症は、血液透析および腹膜透析などの透析療法を導入するに至った原因疾患の1位となっており、その患者数も年々増加しています。

透析医療の進歩によって腎不全死を防ぐことは可能になったものの、糖尿病性腎症が導入原因となった透析患者では、予後が芳しくないがわかっています。

その原因の一つは、心血管疾患につながる血管病変が、糖尿病患者では強いという点にあります。また、透析療法自体が血管障害を起こしやすいことも予後の悪化と関係しています。

近年では、腎臓病の原因に関係なく、腎機能が正常の半分程度に低下した段階から心血管疾患の発症リスクが上昇することが判明しており、陣機能の低下を起こさせない、進行させないという医療の徹底が望まれます。

腎不全のリスクはメタボリックシンドロームの改善で低減させることができます。糖尿病、高血圧症、高尿酸血症の患者さんのなかで、内臓脂肪蓄積がありメタボリックシンドロームが疑われる場合は、各疾患の治療を行いながら生活習慣を改善して内臓脂肪を減らすことが大切です。

糖尿病性腎症…糖尿病の細小血管障害の一つ。高血糖の状態が続くと糸球体内毛細血管基底膜の肥厚が進み、微量アルブミン尿が出現します。病変が進行すると尿タンパクは持続し、次第に糸球体の硬化が起こって陣機能は低下します。

高尿酸血症による腎障害…高尿酸血症が持続して酸性尿を伴うと、尿酸結晶が析出して尿細管腔や間質に沈着します。高尿酸血症は尿管結石の原因ともなるため、尿のアルカリ化、十分な水分補給などによる尿路管理が求められます。

腎硬化症…高血圧に伴う腎病変を一般的に腎硬化症といいます。老廃物を一定速度で濾過するために、糸球体血圧は全身の血圧が変化しても一定に保たれています。このため、軽度の高血圧では糸球体血圧は上昇しません。しかし、高度の血圧上昇や長期にわたる血圧高値では糸球体血圧の調節能力が破綻し、腎機能障害に至ります。