死亡率の高い脳血管障害は高血圧の管理と動脈硬化の進展を防ぐことが重要

脳血管障害には、脳の血管の閉塞により生じる「脳梗塞」、脳血管の破綻による「脳出血」があり、脳梗塞はメタボリックシンドロームによる動脈硬化の進展が関係していることが多くなっています。

激しい頭痛は危険なサイン

脳梗塞はさらに、粥状動脈硬化や細動脈硬化により血管が閉塞する「脳血栓症」と、心臓内や主幹動脈の粥状動脈硬化病変から血栓が剥離し、脳血管に詰まる「脳塞栓症」があります。

主幹脳動脈に起こる脳血栓症は冠動脈と似た粥状動脈硬化病変で、梗塞部位も大きいのが特徴です。主幹脳動脈から分岐する穿通枝に起きる病変は細動脈硬化で、直径15mm以下のラクナと呼ばれる小梗塞を生じます。

脳出血には、脳実質内に出血する脳出血と、くも膜下腔に出血する「くも膜下出血」があります。脳出血の多くは高血圧による細動脈硬化をきたした血管が壊死を起こして小動脈瘤を形成し、これが破綻することによって出血するといわれています。

くも膜下出血の最も多い原因は脳動脈瘤の破裂であり、激しい頭痛と意識障害で発症する場合が多いです。これは動脈硬化とは異なりますが、高血圧を伴っていることが多いです。

脳血栓や塞栓により梗塞を起こすと壊死した脳組織は融解します(脳軟化)。虚血による症状が24時間以内に回復するものは「一過性能虚血発作」とよばれます。脳梗塞の原因となる心疾患として最も多いのは心房細動です。

心筋梗塞を一旦起こした人では左心室内にできた血栓が飛来して脳塞栓症の原因になることもあります。閉塞した血栓が融解後、血流が再開通すると出血性梗塞を発症することがあります。頚動脈の粥状動脈硬化病変から剥離した血栓が眼動脈を閉塞し、一過性の失明に至ることがあり、脳梗塞のサインの一つとして見逃せません。

メタボリックシンドロームは、粥状動脈硬化を基盤にした脳血栓症のリスクとなり、さらに高血圧を伴うことにより、脳出血やラクナ梗塞の発症リスクが高まると考えられています。また、心房細動を伴った場合の左心房内血栓の恐れがあるほか、粥状動脈硬化による頚動脈病変で血栓が飛来すると脳塞栓症に至る場合もあります。

いずれも死亡率の高い疾患であり、麻痺や失語など生活に支障をきたす大きな障害が残ることが多くなっています。メタボリックシンドロームにおいては、高血圧に対する管理と同時に、動脈硬化を進展させ内容に内臓脂肪を減らすことが重要です。