虚血性心疾患の診断に使用される心電図と心エコー(心臓超音波検査)

標準12誘導心電図は健診・人間ドックで必ず行われる大切な検査の一つです。検診の心電図を見る細に重要なのは、心電図から得られる情報の意味と限界を知り、必要に応じて他の検査による裏づけを取ることです。

不整脈の診断に欠かせない

心電図では正常から多少外れた所見であるものの、通常は病的意義はなく健常者に見られることがある所見をnormal variantといいます。代表的な所見としては早期再分極、若年パターンなどがありますが、これらを病的と判断すると必要のない追加検査を行い、被検者に負担をかけることになるため的確な対応が求められます。

STの上昇や低下が虚血性心疾患でみられることが有名なため、ST変化やT波変化があると全てを虚血性変化とか心筋障害と診断する傾向にあります。

もし患者さんに胸部症状が認められたり、心電図上の異常Q波や冠性Tなどの虚血に特徴的な所見を伴っている場合にはその診断は容易です。しかし、実際の健診で遭遇するのは無症状で他の所見を伴わないST-T変化であることがほとんとです。

1枚の心電図のみで確定診断を下すことは難しいため、ST-T変化に対して運動負荷心電図や負荷心筋シンチグラムが行われることが多いですが、陽性率は高くありません。

安静時心電図のST-T変化は心筋虚血に対する特異性は高くありません。そこで負荷を加えることによって、安静時には明らかでない異常を検出するために行われるのが負荷心電図です。

負荷心電図は主として労作性狭心症などの虚血性心疾患の診断に用いられますが、運動により誘発される不整脈の検出にも有用です。負荷心電図には運動負荷、薬物負荷、過呼吸などの方法がとられますが、一般的には運動負荷が採用されるケースが大半です。

ホルター心電図は、携帯型の小型心電図記録装置で、24時間以上にわたる心電図を連続記録することができます。ホルター心電図は、他の方法で虚血の存在が明らかになった場合に用い、日常生活での虚血発作、自覚症状との関係や、治療効果の判定に有用となっています。

健診で心疾患を疑わせる身体所見(心雑音、過剰心音、安静時心電図異常など)が認められ場合に大切なことは、治療すべき心疾患の有無を見極めることです。心エコー(心臓超音波検査)は、心筋・弁の動きや性状、心房・寝室の大きさや形態、血流動態などの情報が詳細に得られ、非侵襲的に心疾患の診断、重症度を評価することができます。